<アラスカ(アメリカ領) Alaska>
アメリカの女性作曲家ビーチ Amy Beach(1867-1944)による〈エスキモー Eskimos Op64〉(1907、楽譜つき) は、アラスカやカナダのエスキモー(現在ではイヌイットと言います)の音楽を取り入れて作られた作品ではないでしょうか。「アメリカ ピアノ小曲集」(音楽之友社、2023)に楽譜が収録されています。
さらに、Bethany Brinton《アラスカの旗》 があります。
<カナダ Canada>
Canadian piano music からたくさんの作品を聴くことができます。調査中。
André Mathieu(1929ー1968)《Prelude No.5》 は美しく、はかない感じです。
John Burge (1961ー )《Escape Velocity》(スピードへの脱出)
検索しているうちにロシニョール François Rossignol の作品が出て来ました。
ロシニョール《Titouan》 (楽譜つき。Titouanとはモロッコの街のようです。)
《Birds part2》(楽譜つき。印象派風の作品です。)
《Gargouilles》 (楽譜つき)
グレン・グールドが弾いた現代音楽のCD(グールド●現代ピアノ音楽作品集(SONY SRCR8937))があり、そこ
にカナダの作曲家モラヴェッツ Oscak Morawetz(1917ー2007)、アンハルト István Anhalt(1919ー2012)、
エテュ Jacques Hétu(1938ー2010)、ペントランド Barbala Pentland(1912ー2000)、とヴァレン Fortein Valen(1887ー1952 ノルウェー)の作品が収録されていました。私にはちょっと理解できない音楽でですが。
<アメリカ U.S.A>
アメリカには知られざる多くのピアノ曲が眠っているものと思われます。この国のピアノ曲を昔の作品から順に聴いてゆくと、ヨーロッパの作品の模倣から始まって、やがてこの国独特の音楽が創られてきた過程がよくわかります。
18世紀のアメリカのピアノ曲を集めたCDがあります(American Piano Music of the 18th Century、piano:William Gran naboe、Doron Music DRC3001)。ここに収録されている Reinagle、Moller、Hewitt、Brown等の作品は一つひとつは良い曲なのですが、まるでハイドンやモーツァルトの焼き直しのようで、独創性は感じられませんでした。
アメリカ先住民(ネイティブアメリカン)の音楽がピアノになったものを、近年聴くことができるようになりました。
Harvey Worthington Loomis(1865ー1930)作 Lyrics of the Red Man,Op.76 Music of the Calumet
Lyrics of the Red Man,Op.76 The Chattering Squaw
こうした作品は、みな19世紀以後に作曲されたものです。新鮮な発見のある曲があったものの、ややインパクトに欠けるものもありました。もしもそれらの作品が、抑圧者としての白人が先住民の音楽をただものめずらしげに眺めて作っただけの音楽なら、人を感動させることはできません。作品の価値は、アメリカ先住民が体験してきた悲惨な歴史を正視した上で、民族の尊厳を求める切なる願いをどこまで表現出来ているかどうかにかかっていると考えます。
最近は新しいCD等が出ているようです。
Carlos Troyer(1837ー1920)作 Kiowa -Apache War Dance
この分野の音楽の今後の発展を期待いたします。先住民自身が作った作品も聴いてみたいものです。
メイソン William Mason(1829ー1908)の作品は、19世紀ヨーロッパのロマン派サロン音楽の典型でアメリカ的要素は希薄ですが、この種の音楽の中では最上のものの一つでしょう。CD「W.メイソン ピアノ音楽集」(ピアノ:ケネス・ボールトン、NAXOS 8.559142)があります。
Kenneth Boulton, Pianist. Three Pieces by William Mason - YouTube メイソン作《銀の泉》
ゴットシャルク Louis Moreau Gottscalk(1829ー1869)の作品は、初めて出現したアメリカ的性格のピアノ曲と言えるのではないでしょうか。
マクダウェル Edward MacDowell(1861ー1908)の「森のスケッチ」は親しみやすく、中でも《野ばらに寄す》はきわめて有名。また、まぎれもなくアメリカの音楽です。楽譜は全音から。
Edward MacDowell - Woodland Sketches, Op. 51 - Bing video
スコット・ジョプリン Scott Joplin(1868ー1917)はラグタイムを創始しました。
アイヴス Charles Ives(1874ー1954)の音楽は、時代を先取りしすぎていて私にはよくわかりませんが、《ピアノソナタ第2番》第3楽章の《オルコット家の人々》は、ベートーベンの「運命」のきわめて有名な旋律を元に、敬虔なアメリカ人の祈りの生活を歌いあげた美しい作品です。
Jeremy Denk plays "The Alcotts" from Ives' "Concord" Sonata - Bing video
グリフィス Charles T.Griffes(1884ー1920)の作品は印象派的ということですが、私にはよくわかりませんでした。
Charles Griffes "Sonata (1918)" - Pianist David Allen Wehr - YouTube
ピストン Walter Piston(1894ー1976)の《ピアノソナタ》(1926年)が収録されたCDには「循環形式を用いた19世紀型音楽」との解説がつ いていました。私には数学的な面白さが感じられました。今のところ、ユーチューブには見つかりません。
黒人作曲家の先駆者としてデット Robert Nathaniel Dett(1882ー1943)がいます。
(20+) Watch | Facebook ←デットの作品をガーナ人のニャホが弾いたもの。
楽譜情報は「アフリカのピアノ曲」へ。
もうひとりの黒人作曲家スティル William Grant Still(1895ー1978)のピアノ曲には、かなり洗練された響きがありました。CD「スティル ピアノ曲集」(ピアノ:マーク・ブーザー、NAXOS 8.559210)があります。
スティル作 《3つのヴィジョン 1.闇の騎手、2.サマーランド、3.輝ける尖峰》,1935年の作品です。
アメリカ国民となった中国人の作曲家に周文中 Chou Wenchung(1923ー2019)がいます。→「中国のピアノ曲」の「在外華人」
古き良きアメリカの雰囲気を楽しみたいんだという方にはコープランド Aaron Copland(1900ー1990)の作品《Rodeo ロデオ》などをおすすめします。これはまるで西部劇から出て来たような音楽で、アメリカが新大陸と呼ばれていた時代のフロンティア・スピリットの息吹を伝えているようです。
コープランドの作品 《ロデオ 1、2、3、4、5楽章》 《ロデオ》5楽章 《我らの町》
《エル・サロン・メヒコ》 《エル・サロン・メヒコ》(楽譜つき)
番外編 バレエ《ロデオ》から《Hoe-down》 ←優雅なところが全くないバレエです。
この後の世代では、保守派の雄といわれるバーバー Samuel Barber(1901ー1981)がいます。《ピアノソナタ 変ロ長調》はホロヴィッツに捧げられました。ポリフォニックな手法と和声的工夫がみごとに釣り合った作品です。なお、これ以外のバーバーのピアノ曲は良くも悪くも小市民的な感じがします。
Horowitz / Barber Piano Sonata Op.26 LIVE - Bing video
なお、20世紀を代表する作曲家といわれるケージ John Cage(1912ー1992)の作品を収録したNAXOSのCDを、何の予備知識もなしに聴いてみましたが、何だかインドネシアかアフリカの民族音楽のような感じがしました。ケージには《4分33秒》という有名な作品があります。ピアニストは4分33秒ピアノの前に座っていて1音も出しません。「ピアノ作曲家 作品事典」(中村菊子・大竹紀子著、2003年、ヤマハミュージックメディア)でこの曲の演奏レベルが最高難度の7になっているので、音大の先生に「ピアノを全然弾かないのにどうしてですか」と聞いてみたところ、先生もあきれていました。権威ある事典になぜこんなことが書いてあるのか理解に苦しみます。
幻のピアニストとして騒がれたニレジハージ Ervin Nyiregyhazi(1903ー1987)のことを覚えておられる方はいらっしゃいますか。(右はレコードの表紙です)。
ハンガリー生まれのこの孤高の芸術家は、ながらくスラム街で暮らし、ピアノも持たず弾くこともしないで何十年も経ったあと、突如現れて世界の注目を集めることになりました。1980年と81年、日本に招かれました。私は2回の演奏会に行きまして、深い精神性が感じられたものの、いくら天才でも練習が足りないのではないか、また生涯で10回も結婚するなんてどういうことなのかなと思いました。
Nyiregyhazi live in Takasaki (31/05/1980) - Bing video
2回目の演奏会の曲目はすべて彼の作曲になるもので世界初演でした。ただ1回聴いただけではよくわからなかったというのが率直な感想です。
ニレジハージの1000曲にのぼる作品の楽譜は遺族からすべて高崎芸術短期大学に寄贈され、現在はまた別のところですが日本国内で保管されています。ユーチューブに、ニレジハージではない別のピアニストがその作品を演奏している動画がいくつかあり、それらを視聴することによって、今後、彼の音楽の本質が見えてくることを期待しています。
Ervin Nyiregyhazi - untitled composition dated June 1970 | Michael Sayers - Bing video