<アフガニスタン Afghanistan>
Milad Yousufi が演奏する作品をいくつも視聴することが出来ます。
Ahesta boro(Afgan Wedding song) Aashiqui2 Chunar(ABCD2) Zendagi Chist(Ahmad Zaher作)
2021年8月のタリバンによる政権掌握で、この国のピアノ音楽はどうなってしまうのでしょうか。
<アラブ世界全般 Arab world>
現在アラブ世界に引かれている国境線は西洋列強が作った人為的なものかもしれません。アラブ世界はもともとひとつの国とも言っても良いほどで、まぎれもなくアラブの音楽でありながら、どこの国の音楽か分別しなくても良いと判断した作品をここに置いておきます。
Martin Gallegos 《Arabian Piano》
イタリア人とレバノン人の両親から生まれ、アブダビに在住している Ramzi Hakim がアラブのメロディーから作られたさまざまなピアノ曲を18曲録画しています。タイトルの意味もわかりませんが。どなたか日本でも弾いてみて下さい。この中で私が気に入ったのは1、4、5、6、11 です。
Waidi Abou Diab 編曲 Arabic Folk Tunes for solo piano (p:Ramzi Hakim、すべて楽譜つき)
1《Bent Al Shalabiya》(Oaoud Hosni/Rahbani Brothers)
2《Mahla Nourha》(Sayed Darwich)
3《Zourouni》(Sayed Darwich)
4《El Helwa Di》(Sayed darwich)
5《Fog Elnakhel》(Iraki Folk)
6《Reitak Ma Na'ref Wen》(Tunisian Folk(Lofri Boushnak))
7《Aman Aman》(Tunisian Folk)
8《Sheftik Marra》(Tunisian Folk)
9《Rozana》(Palestinian Folk)
10《Yomma Mwel El Hawa》(Palestinian Folk)
11《Ya Mayela》(Syrian Folk)
12《Hewel Ya Ghannam》(Syrian Folk)
13《Yal Rayeh》(Algerian Folk)
14《Lamma Bada Yotathanna》(Mouwashah)
15《Hebbi Zourni》(Mouwashah)
16《Zarani Al Mahboub》(Mouwashah)
17《Wadeeh Al Safi Medley》(Wadeeh Al Safi)
18《Om Kolthoum Medley》(M.Abed Al Wahhab/B.Hamdi)
<イラン Iran>
イランには昔から独自のピアノ曲が存在していました。
ジャバド・マロウフィ Javad Maroufi(1912-1993、Maroof と記すものもあり) の作品の録音テープを持っています(コピー・レコードを友人がパリで入手)。この作曲家の作品《Fantasie Jila》の楽譜が東京芸術大学小泉文夫資料室にあることがわかり、コピーしました。
Javad Maroufi 《Golden Dream》 ←楽譜と映像。ユーチューブにさらに多くの映像あり。
1960年の第6回ショパン国際コンクールでタニア・アチョット=ハルトゥニアン Tania Achot-Haroutounian
という人が3位に入賞していますが、その後どうなったのでしょう。どなたか情報をご存じな方はお知らせ下さい。
2006年1月24、25日、宮本いずみさんがテヘランでコンサートを開き、ベートーベンのソナタなどを演奏しました。ヤマハがイランでのピアノ教室普及のために開いたものだそうです(朝日新聞 2006.1.26夕)。もっともこの国ではすでにピアノが普及しているような感じがします。西洋のピアノ曲がどれほど普及しているかはわかりませんが、ユーチューブには多数のイランのピアノ曲がありました。調査中。
live in Tehran: Soheil Nasseri plays Ey Iran ← 聴衆が熱狂して一緒に歌い出しているので、この国で広く愛さ
れているメロディーだと思います。
Persian piano music Sweet Moment(Persisk piano)
↖ Shahedad Rohani(1954- イラン系アメリカ人)の作品を耳コピで楽譜を作って弾いています。
Isfahan Rhapsody-A Persian Night with Vancouver Opera Orchestra ← ピアノ協奏曲
(作曲:Javad Maroufi、編曲とピアノ:Shardad Rohani)
アメリカのピアニスト Tara Kamangar はイランの作品をアメリカとヨーロッパで初演した人だということです。CD:East of Melancholy には、ロシアの作品と共に多くのイランの作品が収録されています。(全18曲の
うち、No.2,9,11,12はLoris Tjeknavorian、No.3,5,6,7,8,10,13,14はAndré Hossein、No.16はTara Kamangar の作品です。なおNo.13はDelbar Hakimovaとの共作。またTara Kamangarがアレンジしている作品もあります。)
André Hossein(1905ー1983)作《Prelude No.1》 p:Tara Kamanger
(オッセンはイスラーム以前のイラン文化に愛着を持ち、ゾロアスター教に改宗した人物とのことです。)
CD「Layia Ramezan plays 100 Years of Iranian Piano Music, Vol 1」(PARATY616140)があります。ここには1929年から1977年までの作品が収録されていますが、いわゆる現代音楽で、もっとわかりやすい作品はないのかと思っています。最近、このシリーズの第2巻が出ました。Layia Ramezan はいまイランの作品を積極的に紹介しているピアニストでユーチューブの動画がいくつもあります。 Layla Ramezan plays 100 Years of Iranian Piano Music - Bing video
アイルランドのピアニスト Mary Dullea がCD「Persian Autamn」を出しており、全曲を聴くことができます。ホルムズ・ファルハト Hormoz Farhat(1928- )とアミール・マヤル・タフレシブール Amir Mahyar Tafreshipour(1974- )の作品を取り上げたもので、こちらも現代音楽。
イランにはcomtemporaryな音楽がたくさんあるようです。これらは19世紀以降に欧米やロシアなどで進められた音楽におけるさまざまな実験と連動しているのか、それともイランで独自に発展してきたものなのか、現代音楽に詳しい方に判断してもらいたいです。
CD「アフシン・ジャベリ●「バーブ」~ピアノ・ソナタ集とバラード集」(The Bab Piano Sonata and Ballades Composed and Performed by AFSHIN JABERI、GRAND PIANO GP694)があります。ジャベリ Afshin Jaberi(1973ー )はバハイ教の信者で、その作品はバハイ教の信仰を歌いあげたものです。この CDに
収録されているピアノソナタ第3番「ベドウィン」は「バハイ教の啓示者セイイェド・アリー・モハンマドの殉教の物語を表現したもの」とされており、特にその第1楽章は聴く価値があると思いました。
[GP818] Afshin JABERI: Ballades Nos. 4–9 ‘The Eroica’ - Bing video ←ジャベリのCD情報が入った動画。
参考書:「世界音楽の時代」(ブルーノ・ネトル著、勁草書房、1989年)、イランのピアノ音楽に関する考察が載っています。
<シリア Syria>
Dia Succari(1938ー )の《La Nuit du Destin》という流麗な作品があります。
(CD:World Keys、piano:Joel Fan、Reference Recordings RP-106に収録)。
Dia Succari - La Nuit du Destin - Bing video ←別のピアニストによる演奏。
また、この作曲家の《Suite Syrienne》の楽譜があります。出版社は Societe des Editions Jobert(44,rue du Colisee - 75008 Paris France)。弾いてみて、アラブのメロディーの主題が展開してゆくところが私にはわかりにくかったです。
<レバノン Lebanon>
Abdallah Chahine(1894ー1975)はアラブ世界ではもっとも有名なピアニストの一人だそうです。この人は1974年にピアノによるアラブ音楽(ピアノ曲ですが太鼓がつきます)のレコード「Oriental Bouquet」を出しています。ユーチューブにいくつか動画がありました。 Abdallah Chahine - Batit Uyuni - YouTube
Tatiana Primak Khoury の弾いたレバノンの作曲家による作品がユーチューブにいくつかあります。Toufic Succar(1922ー2017)の《Variations sur un theme oriental》(1947)。これ以外の作品はわかりにくかったです。調査中。CD「Labanese Piano Music」(piano:Tatiana Primak Khoury、GRANDPIANO GP715)があります。
現代音楽作品としては、Naji hakim(1955ー )の《Dumia》があります。
国際的知名度が高いピアニストでは、アブデル・ラーマン・エル=パシャがいます。
<ジョージア Georgia>(グルジア)
ロシアのリャプーノフ Sergei Lyapunov(1859ー1924)に《グルジア民謡の主題による変奏曲》があります。
さわやかな作品です。
【リャプノフ】グルジアの主題による変奏曲 Op.60 - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)
この国の作曲家の作品としては、タクタキシヴィリ Otar Taktakishvili(1924ー1989)の1951年の作品、《詩曲 Poem》があります。CD「ロシア&ソヴィエトの作曲家によるピアノ音楽アンソロジー Vol.2」(MEL CD 1001964)に収録されています。この曲の演奏はLuka Okrostsvaridze。
<アルメニア Armenia>
ハチャトゥリアン Aram Khachaturian(1903ー1975)のピアノ独奏曲の多くは、あまりに健康的で、まるで健康優良児を連想させるようでした。《トッカータ》(1932年)にはアルメニアの民族色があります。有名な《仮面舞踏会》にはミステリアスな魅力があり、彼の作品としては異色なものなのかもしれません。
Lev Oborin plays Khachaturian Toccata - video 1967 - Bing video
ハチャトゥリアン《Spectacus:Adagio》 ←M.Cameronによるアレンジ
ハチャトゥリアン 仮面舞踏会 ワルツ MASQUERADE SUITE Waltz A.Khachaturian - Bing video
アルメニアにはこの他、アルチュニアン Alexander Arutiunian(1920ー2012)、ババジャニアン Arno Babadjanian(1921ー1983)などの個性的な作曲家がいます。アルチュニアンの《3つの音楽的絵画》は全音楽譜出版社から楽譜が出ています。
Alexander Arutiunian - 2 Musical Pictures - Bing video
↖ アルチュニアン《3つの音楽的絵画》から《2.アララト平地の夕べ 、3.戦士の踊り》(楽譜つき)
旧約聖書にノアの箱舟が流れ着いたところとして書かれているのがアララト山で、その光景が見えるようです。
Six Pictures - Bing video (ババジャニアンの自作自演です。)
<アゼルバイジャン Azerbaijan>
ハシバイリ Üzeyir Hacibayli(1885ー1948)、アミロフ Fikret Amirov(1922ー1984)などの作品があります。1991年のソ連崩壊以前、この国には実に多様な音楽文化があったということがわかります。
ハシバイリの作品 "Arşın mal alan" dan "Asyanın mahnısı " Gözəlim yar gözəlim " ( notlar ) その楽譜です。
↖ これが題名だと思うのですが。
アミロフの作品《12のミニチュア》
<トルコ Turkey>
この国の代表的作曲家はサイグン A.Adnan Saygun(1907ー1991)です。ハンガリーのバルトークのように、自国の民族音楽の収集と西洋音楽との融合に力を尽くした作曲家だということです。ユーチューブに動画多数。
調査中。
サイグン作《アクサク・リズムによる10のスケッチ 第10曲》
また、この国出身のピアニスト・作曲家であるファジル・サイ Fazil Say(1970ー )が、トルコ民謡とジャズと旋法的な音楽を融合させた作品を発表しています。
ファジル・サイ作《Black Earth》
〈クルド Kurd〉
クルド人はトルコ、イラク、シリアなどにまたがって住む民族で、自分たちだけの国は持っていませんが、独自のピアノ曲があるようです。調査中。
<イスラエル Israel>
この項ではユダヤ人作曲家を取り上げます。世界のどこで生活していたかということは問いません。
ブロッホ Ernest Bloch(1880ー1959)は、スイスに生まれ、アメリカに移住したユダヤ人の作曲家です。その音楽は彼自身が述べているところでは、旧約聖書の世界からの霊感から生まれたユダヤ精神による音楽で、神秘家という面があるようです。CD「Bloch:Complete Piano Works 1&2」(piano:Istvan Kassai、MARCO POLO 8.223288 &8.223289)があります。
ブロッホ《海の詩》←楽譜つき。piano:István Kassai
《ニルヴァーナ》 ←楽譜つき
《預言のヴィジョン》 ←楽譜つき
田隅靖子さんは2004年のリサイタルで、第二次世界大戦中、ナチス・ドイツの虐殺のために犠牲となった4人のユダヤ人作曲家の作品(ヴィクトル・ウルマン《ソナタ第7番》、クライン《ソナタ》、エルヴィン・シュルホフ《組曲第3番(左手のための)》、ハース《パストラル》を演奏しました。CD、動画あり。貴重な試みだと思います。
ベン・ハイム Paul Ben-Haim(1897ー1984)の作品は、民族音楽をベースにした上で現代的な響きを聴かせます。初めはとっつきにくかったのですが、何度か聞いてゆくうちに面白さがわかってきました。
CD「Piano Music of paul Ben-Haim」(piano:Gila Goldstein、Centaur CRC2506)(写真)
Piano Sonatina, Op. 38: I. Allegretto grazioso - Bing video
《マイムマイム》 ←日本でいちばん親しまれているユダヤ人の歌をピアノ曲にしたもの。マイムとは水のこと、乾燥した大地で生きる人々にとって、水がどれほど尊いかは湿潤な地に住む日本人の想像を超えるものがあります。歌詞は「あなたたちは喜びのうちに救いの泉から水を汲む」(旧約聖書イザヤ書12章3節)に基づいています。
<パレスチナ Palestine>
現在、悲惨な状況の中にありますが、それでもピアノ音楽があります。それは不条理からの解放を求める叫びのようです。私は、聴くたびに「フリーパレスチナ」の思いを新たにさせられます。調査中。
Mawtini (My Homeland) - موطني - Piano Cover - Bing video
↖ イラクで国歌として用いられ、パレスチナでも国歌に準ずるものとして愛唱されている歌のピアノ版。
<キプロス Cyprus>
フランスのピアニストで作曲家であるシプリアン・カツァリスは、ギリシャ系キプロス人の家庭に生まれました。彼が弾いたCD「A Tribute to Cyprus(piano:Cyprien Katsaris、NIGUT&DAY P21 015)」(写真)には7人の作曲家によるキプロスに関わる作品が収録されており、この内5人はシューベルトを含む外国人で、残る2人がカツァリス本人とフレイハンです。
カツァリス作曲・演奏 Rhapsodie Chypriote
1901年にこの国で生まれ、1915にアメリカに移住したフレイハン Anis Fuleihann(1901ー1976)の《Cypriana 1、2、3、4、5》を探している時に《砂漠のセレナード Serenade in the Desert》と《ベドウィンのダンス Bedouin Dance》という珍しい曲が見つかったので、リンクしておきます。
やはりキプロスで生まれたアメリカの作曲家にツィツァロス Christos Tsitsaros(1961ー )がいます。