<メキシコ Mexico>
この国を訪れて、ここがピアノ音楽の宝庫だということがわかりました。
ビジャヌエバ Felipe Villanueva(1862ー1893)の《詩的ワルツ Vals poetico》など民族的な音楽があります。
Vals Poético - Felipe Villanueva - Bing video
カンポス Ruben M.Campos(1876ー1945)の作品は、良い意味でたいへん大衆的な音楽でした。
ガリンドー Blas Galindo(1910ー1993)の土俗的な哀愁を帯びた《Siete Piezas para piano》は、忘れがたいものがあります。楽譜はEdiciones Mexicanas de Musica.A.C.(Avenda Juarez,18,DESP. 206 Mexico.D.F.)から。 またモンカージョ Jose Pablo Moncayo(1912ー1958)の《3つの小品(Tres piezas)》は、メキシコ先住民の音楽をピアノで表現したものでたいへん新鮮でした。楽譜は「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選3 メキシコ編」(全音)に収録。
J.Moncayo - Tres piezas - ニコニコ動画 (nicovideo.jp)
「jose pablo moncayo,piano,muros verdes」の検索結果 - Yahoo!検索(動画) ←《緑の壁》謎めいた曲です。
一方、メキシコ・ロマンティシスモと言われる作品群が魅力的です。ただ楽譜の入手が難しいのが難点です。
CD ①:Música Mexicana de Salón 、② Mas Música Mexicana de Salón
↖ p:Raúl Herrera。 メキシコのピアノ曲の入門編として最適です。ただ各作品について、作曲者名が記され
ていません。作曲者名を知りたい方は中南米ピアノ音楽研究所→メキシコ→Elorduy などから調べて下さい。
Ernesto Elorduy(1855ー1913)作《Nebulosa,Hoja de álbum》(=星雲、楽譜を入手)
Ramón Serratos - Vals en Sol Mayor - Arturo Uruchurtu, piano - YouTube
メキシコを代表する作曲家がポンセ Manuel Maria Ponce(1882ー1948)です。ポンセの作品《エストレリータ(星)》は、ヴァイオリン曲、チェロ曲、歌曲、ピアノ曲などになっていて、これを読んでいる方なら、どこかできっと聴いたことがあるはずです。ポンセはギター曲で世界的に有名になったので、ピアノ曲がその陰に隠れてしまいまいたが、実はたくさんのピアノ曲があって、近年、CDが少しずつ出てきました。
彼はフランスに留学しデュカスの弟子でありました。クラシック音楽と民族音楽とポピュラー音楽を統合させた、独自のきわめて魅力的な音楽を作りました。旋律の天才です。
初めての方には間奏曲第1番(1912年)とガボット(1900年)をお薦めします。
Malgre tout (それでもやはり、1900年の作品)
Gavota Manuel M. Ponce - Bing video (ガボット、1901年、楽譜付き)
Mazurka No.1 (マズルカ第1番、1901年頃)
Mazurka No.2 (マズルカ第2番、1901年頃)
Mazurka No.4 (マズルカ第4番、1901年頃、ピアノ:井上豊)
Mazurka No.5 (マズルカ第5番、1903年頃)
Mazurka No. 6 Manuel M. Ponce (with score) - Bing video (マズルカ第6番、1903-1910頃。楽譜付き)
Mazurka No.10 (マズルカ第10番、1903ー1910年頃)
Preludio y fuga sobre un tema de Haendel Manuel M. Ponce (with score) - Bing video
(ヘンデルの主題によるプレリュードとフーガ、1906年、楽譜付き)
Nocturno No.1、No.2(ノクターン1番、2番、1906年)同じ曲 No.1とNo.2(楽譜付き)
↖2つ続けて聴いて、長い暗い夜が次第に明け渡るような思いになりました。名曲です。
Estudio "Juventud" Manuel M. Ponce (with score) - Bing video (青春、1907年、楽譜付き)
Quimera of Trozos Romanticos(ロマンティックな小品集から”キマイラ(怪物)”、1907?ー1911年
M. Ponce | Scherzino Mexicano arr. piano - Bing video (メキシコ風スケルツォ、1909年、楽譜付き)
Rapsodia Mexicana No.1 (メキシコ狂詩曲第1番、1911年)
Intermezzo no. 1 Manuel M. Ponce - YouTube (間奏曲第1番、1912年、楽譜付き)
The World Music - Lang Lang - Intermezzo - The Late Late Show - Bing video (間奏曲第1番、1912年、ランランの演奏)
Rapsodia Mexicana No.2 (メキシコ狂詩曲第2番、1913年)
Manuel Ponce - Romanza de amor - YouTube (愛のロマンス、1914年、楽譜付き)
Balada Mexicana Manuel M. Ponce - Bing video (メキシコ風バラード、1914年、楽譜付き)
Rapsodia Cubana no.1 (キューバ狂詩曲第1番、1915年)
Mazurka No.19(マズルカ第19番、1917年頃)
La Alhambra of Cuatro Evocaciones (「想起」からアルハンブラ、1921年)
Preludios encadenados (繋がれた前奏曲集、1927年)
Preludio y Fuga para la mano izquierda sola (左手のための前奏曲とフーガ、1931年)
Mazurka No,23 (マズルカ第23番)
Ponce, concierto para piano. Abdiel Vazquez. OJUEM. Rivero Weber - YouTube
↖《ピアノ協奏曲》、名曲です。楽譜を持っています。どこかのオーケストラで演奏してほしいです。
ユーチューブに動画多数。Hector Rojasによるポンセのピアノ曲全集も入っています。
CDでは「Balada Mexicana、piano:Jorge Federico Osorio、ASV DCA874」(写真)を特にお薦めします。
全音から宮崎幸夫さん編集・演奏になるCDつき楽譜「ポンセ ピアノアルバム」が出ています。
現在、ポンセのすべてのピアノ曲を聴くことができるよう工事中です。マヌエル・M・ポンセのピアノ曲。
アルメンゴル Mario Ruiz Armengol(1914ー2002)の作品は、おしゃれで都会的、今はまだ知る人ぞ知る存在でしかありませんが、日本での流行を期待したいと思います。こちらは官川薫(ひろかわかおる)さんによる《キューバ舞曲》の演奏です。官川さんは 中南米ピアノ音楽研究所 (pianolatinoamerica.org) を主催されている方で、「kaorupiano」で検索すると、アルメンゴルばかりでなく多数の中南米の作品を視聴できます。
アルメンゴル作《Danza Cubana 1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、
《Danza Cubana No.12、3、10、18》 ←p:Gustavo Rivero Weber
《Dazna Cubana》 ←全曲。p:堀澤幸恵
メキシコのピアノ曲の楽譜としては宮崎幸夫さんが出版したものがあり、IMSLP Free Sheet Music で入手出来
るものも、私が収集したものもあります。中南米ピアノ音楽研究所 に詳細な情報があります。
メキシコの音楽図書館(私はここに行って楽譜をコピーしてもらいました。)
① Centro Nacional de las Artes CENART | Contacto
② Escuela Nacional de Música (mexicoescultura.com) ①のすぐ近くにあります。
<グアテマラ Guatemala>
Marco Polo社から、Guatemala VolumeというシリーズもののCDが出ており、その内の少なくとも2つ(Volume3:Manuel Martínez-Sobral 、Volume4:Ricardo Castillo)がピアノ曲でした。
マルティネス=ソブラル Manuel martínez-Sobral(1879ー1946)の作品はモーツァルトやヨーロッパのロマン派の影響が強く感じられます。マルティネス=ソブラル作《Sonata for Piano 1、2、3、4》
一方、カスティージョ Ricardo Castillo(1894ー1966)の作品は、先住民族マヤの音楽を継承したもので、なんとも不思議な雰囲気がありました。(楽譜はかつてフランスのMax Eschigから出ていました)。
カスティージョ作《Barcarolle No.2》、《3 Nocturnes Ⅰ.Nocturno》
《Danza de los Seres Misteriosos 不思議な人たちの踊り》
《グアテマラ、印象の連続 Guatemala,serie de impresiones》
↖組曲。1.古い教会の広間にて 2.コフラディアの退出 3.行列 4.コフラディアが
入ってくる(お祭り騒ぎ)5.漁師の歌 6.アマティトゥラン湖の子がも
「グアテマラ民族主義作曲家としてのカスティージョのピアノ曲の最高傑作!」(官川薫)
・この国のキチェ族はマヤの神々とキリスト教が融合した宗教を信じていて、各村の講組織
の集まりをコフラディアと言います。
この曲の詳しい解説は官川さんのホームページ「中南米ピアノ音楽研究所」にあります。
<ホンジュラス Honduras>
Honduras piano musicで検索して6曲を聴くことが出来ました。あまりにも純朴な感じで、技術的にもやさしそう、19世紀的と言われかねない作品群ですが、それなりに味わい深いものだと感じました。
ポルティージョ Abraham Portillo の作品《Guadalupe》(1948)
↖(グアダルーペはメキシコの都市。「グアダルーペの聖母」の出現で有名)
リバス Jimena Andonie Ribas の作品、《Cuentos para piano》の楽譜を入手し(Secretaria de Cultura y Turismo Honduras, C.A.より)、またR.Velasquezの作品《Dos Canciones Hondurenas(2つのホンジュラスのうた)》の録画を友人から入手しましたが、どちらも純朴な作品でした。
<キューバ Cuba>
ポピュラー音楽の聖地として世界的に注目されているキューバは、クラシックのピアノ曲でも期待が持てそうですです。セルバンテス Ignacio Cervantes (1847~1905)やレクオーナ E.Lecuona( 1896~1963) の作品など、一度聴いただけで体が踊り出したくなるようで、日本でも愛好者を増やしてゆくでしょう。
2001年10月ピアニスト宮崎幸夫さんによって、CD付き楽譜「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選」④キューバ編が全音から発行されました。(CDだけならラック・ミュージックから)。ここに収録されているセルバンテスの《すごい衝撃(Los tres golpes)》は、“これぞキューバの魂”と言える作品。
《Tu(あなた)》 ←Eduardo Sánchez de Fuentes 作ハバネラ(キューバの民俗舞曲)のピアノ編曲版の一
つ。私がキューバに行った時、ホテルでフルートとピアノの合奏で《すごい衝撃》と共にこれが演奏され
ていました。これも国民的な作品だと思います。(これとは違うバージョンの楽譜を青空古本市で入手しました。)
こちらは1994年のキューバ映画「苺とチョコレート」(社会主義社会で同性愛は認められるかがテーマの作品)でも紹介されたセルバンテスの《さらばキューバ》と《失われた夢(失望)》です。
2010年、菅川(ひろかわ)薫、奈々子夫妻の校訂・運指によるセルバンテスの楽譜集「キューバ舞曲集」がヤマハミュージックメディアから発行されました。
一方、レクオーナ Ernesto
Lecuona(1895~1963)にはアフリカのリズムが生きているのがわかります。CD:アフロ・キューバン・ダンス(ピアノ:神代麻子、fontec FOCD20018)など。
Ernesto Lecuona plays Lecuona - Malaguena & Andalucia - Bing video
そう言えばキューバの音楽文化とは、ヨーロッパとアフリカと(絶滅した)キューバ原住民の音楽が融合したものなのです。
アレン Andres Alén(1950ー )作《Danzon 〝Legrand"(ダンソン「ルグラン」》
(フランスの作曲家・ピアニスト、ミシェル・ルグランにあやかって彼のような素敵な作品をということで命名されたようです。)
キューバを主題とした外国人の作品としてコープランド(米)の《キューバ舞曲 Danzon Cubano》、ポンセ(メキシコ)の《キューバ狂詩曲 1a Rapsodia Cubana》、アルメンゴル(メキシコ)のキューバ舞曲 全19曲などがあり、お薦めです。
アルメンゴル作 《Danza cubana No.7》 アルメンゴルに関しては→メキシコ
<イギリス領ケイマン諸島 Cayman Islands>
むかし新世界レコード社からケイマン諸島のピアノ曲のCDが販売されたことがありますが、お金がなくて買えませんでした。どんな音楽だったのでしょうか。
<ジャマイカ Jamaica〉
ジャマイカのピアノ曲として Oswald Russell(1939~ )の《Three Jamaican Dances》があります。CD「senku」(piano:William Chapman Nyaho、MSR1091)に収録されています
(参照 アフリカのピアノ曲)。
Oswald Russell, Three Jamaican Dances, performed by William Chapman Nyaho - Bing video
<ハイチ Haiti〉
世界でも最も貧しい国の一つといわれるハイチの人々の未来に希望が与えられますように。
Ludovic Lamothe (1882ー1953)のこちらの曲を聴いて下さい。楽譜は「Piano Music of Africa
and the African Diaspora」(Oxford University Press)に収録されています。→ アフリカのピアノ曲
La Dangereuse: La Dangereuse (Haiti) - Bing video
2021年、CD「ハイチ、わが愛~ハイチの作曲家によるピアノ曲集」が出ました。ピアノはCelimène Daudet、この内の何曲かがユーチューブに入っています。悲しみを帯びた内省的な曲が多く選曲されたようです。Lamotheの《ブードゥー教のイコン~ロコ》 Daudetのリサイタルはこちら。 曲目はすべてハイチのピアノ曲だと考えられます。
〈アメリカ領プエルトリコ Puerto Rico〉
Carlos A. Vazquez (1952~ )の《Imagenes Caribenas》という作品がありますが、私にはどうもカリブのイメージとは結びつきません。
(CD:Sonoric Rituals、Martha Marchena(p)、Albany Records U.S.TROY242の中に収録)。
〈フランス領マルチニック島 Martinique Island〉
差別にめげず、黒人であることに誇りを持って明るく生きる少年を描いたフランス映画「マルチニックの少年」の主題曲が、私の知っているこの島の唯一のピアノ曲です。
・この映画を見た時、主題曲はマルチニック島出身の監督ユーザン・パルシー自らが作った作曲だと紹介された記憶があります。現在、ネットではこの映画を調べると、音楽の欄は「マラボア Groupe Malavoi」となっています。これはマルチニック島の音楽グループだと推測されるので、この島が生んだピアノ曲だと判断しました。楽譜探索中。