South America

南アメリカのピアノ曲

<コロンビア Columbia>

   カルヴォ Luis A.Calvo(1882ー1945)の作品

 《Entusiasmo, Pasilo(熱狂、パシージョ)》(楽譜つき) 

<ベネズエラ Venezuela>

 ASVからCD《ベネズエラ、平原の映像》(DCA890、作曲:Moises Moleiro (1904~1979)、ピアノ:Clara Rodriguez)が出ていますが、2、3の面白い曲を除いて、西洋古典音楽そのままで独創性は感じられません。

      🎹 Joropo de Moises Moleiro performed by Luz Mabel Medina in Vienna - Bing video

                   ↖《ホロポ》(足拍子で軽快に踊る民俗舞踊)、モレイロの作品で世に残るのはこれだけか?

 もう一つ、フェデリコ・ルイス  Federico Ruiz(1948ー   )の作品を集めたCD《Ruiz:Piano music》(

ピアノ:クララ・ロドリゲス)には都会的で洗練された 音楽がありました。夢中になる人が出るのでは? 

    《Tríptico Tropical(Tropical Triptych)123》←2の楽譜 

     At Dawn in Santa Marta    "Eloísa" (venezuelan waltz) by Federico Ruiz - YouTube    チャチャチャ 

     メレンゲ  ←かっこいいです。メレンゲの楽譜 楽譜(チャチャチャなど)      

<ペルー Peru>

 ペルーのピアノ曲は概してたいへん地味で、華麗な要素は少ないながら、深い内容があり、またアジアと共通する音の響きが感じられます。じっくりと味わってみたいものです。その一つ、アギーレ Manuel Aguirre (1863~1951)の《モンタナの光景 Escenas de Montana》は素朴な情感が心に沁みました。

     Manuel Lorenzo Aguirre - De mis montañas, 1ª serie - YouTube

 またTheodoru Valcarcel (1900~1942)の《Chililin-Uth'Aja》やPablo Chavez Aguilar (1899~1952)の《Seis Preludios Incaicos》を聴いていると、まるで日本の佐渡おけさのような世界が出現しますから驚きです。

    Theodoru Valcarcel作《Cuatro Piezas Inkaikas》(1930年)  ←第4曲が《Chililin-Uth'Aja》

    Cyprien Katsaris live in Shanghai, 2007 - Pablo Chávez Aguilar: Preludio Incaico No. 3 - YouTube

                                                                      ↖ Aguilar の《Seis Preludios Incaicos》  

  ペルーのCDについては以前、Alma musicのものを購入できたのですが、今は入手できるかどうかわかりません。ユーチューブで聴くことは出来ます。

  サス Andres Sas (1900~1967)はフランス人でペルーに移住、インディオの音楽を研究し、ピアノ曲に編曲しました。知られざる重要な作曲家と思われます。CDの情報はなく、楽譜もごくわずかしか入手出来ていません。資料収集は今後の大きな課題です。(1992年4月23日、池宮正信さんは東京での演奏会で彼の作品(舞曲?)を演奏しました。そのメロディーには、日本の民謡を思わせるものがありました

<ボリビア Bolivia>

 Simeón Roncal(1870ー1953)の民族舞踏「クエッカ」の様式による作品です。

  Simeón Roncal《ピアノのための20のクエッカ集 20 Cuecas para piano》

    Jaime Mendoza-Nava(1925-2005)の作品。これには現代的な響きがあります。

  Jaime Mendoza-Nava《Tres Danzas Bolivianas、CambaKollaTrenzas

                                       Rongwen Music, Inc.(NewYork)が楽譜を出しています。)

<パラグアイ Paraguay>

 Agustin Barrios(1885ー1944)の作品です。

     Barrios Mangoré: La Catedral - Manuel Matarrita, piano - Bing video 

     Juan Carlos Moreno Gonzales(1911ー1985)の作品です。

    Juan Carlos Moreno González: Tres aires paraguayos - Chiara D'Odorico - Bing video

<ブラジル Brazil>           
  熱帯の国の途方もないエネルギーがほとばしるヴィラ・ロボス  Heitor Villa-Lobos (1887~1959)の驚くべき作品《野生の詩 Rudepoema》をまず聴いていただきたいものです。《花の組曲 Suite floral》、《子どもたちのカーニバル  Carnaval das criancas
》の中の《こどもたちの陽気な騒ぎ(こどもたちのフォリア) A folia um bloncoinfantil》《ブラジルの密林への郷愁 Saudades das Selvas Brasileiras》などもお勧めです。ユーチューブに動画がいくつもあります。ブラジル原住民の音楽世界とも結びついたスケールの大きな作品群にふれると、こんな世界もあるのかと人生が変わったような気持ちになると思います。楽譜は全音のピアノ・ピース No.286に《三つの星  As tres Marias》(原題:三人のマリア)、またカワイ出版から「ヴィラ・ロボス ピアノ曲集1~5」(宮崎幸夫 校訂・監修)が出ています。

    Hamelin - Villa-Lobos:Rudepoema - Bing video  ← 野生の詩

      花の組曲 1.ハンモックに揺られて(夏の牧歌)  2いなか娘の歌(歌う村娘)

       3.菜園のお祭り騒ぎ(庭園でのよろこび) (楽譜つき)              

      Villa-Lobos - A folia de um bloco infantil (do Carnaval das crianças) (Szidon e Metzler, 4 mãos) - YouTube (楽譜つき)            ↖ こどもたちの陽気な騒ぎ(こどもたちのフォリア)

    Saudades das Selvas Brasileiras • Villa-Lobos • Miguel Proença - Bing video

                       ↖ ブラジルの密林への郷愁

      Guiomar Novaes plays Villa-Lobos "As três Marias" - Bing video 三人のマリア

                 

 

 この他の作曲家を紹介します。
 ナザレ Ernesto Nazareth(1863―1934) のいくつもあるタンゴを聴いていると気持ちが軽くなります。CDや楽譜(河合、全音、ドレミ等)
が次々に出て来ています。これからますます流行してような気がします。

      Escorregando - CD Luciano Alves plays Ernesto Nazareth - Bing video  

 ネポムセーノ Alberto Nepomuceno(1864ー1920)はヨーロッパ古典音楽とつながりつつ、ブラジルの音楽を追求した先駆者だと思われます。

      「alberto nepomuceno,piano」の検索結果 - Yahoo!検索(動画)

 ミニョーネ Paulo Francisco Mignone (1897~1986)の「街角のワルツ」集は、私には感傷的すぎるように思えるのですが。ただ人気のある作曲家で、こんなことを言ったら叱られそうです。

  街角のワルツ 8番 - Bing video 楽譜は「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選1 ブラジル編1、全音」など。

 ニャタリ Radames Gnattali(1906ー1988)はしゃれた都会的な作品を作りました。

  Radamés Gnattali - Vaidosa (Neusa França, piano) - Bing video  (楽譜つき) 

    ↖ヴァイドーザ第1番。Vaidosa の意味は「空虚」だが、この曲は「見栄っ張り」として知られています。

  Radamés Gnattali - CANHOTO. Piano: Júlio César Cruz - Bing video

    ニャタリのこの2作品の楽譜は「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選5 ブラジル編2、全音」に収録。

<ウルグアイ Uruguay>

 Eduardo Fabini(1882ー1950)の作品です

 EDUARDO FABINI | Estudio arpegiado | Piano - YouTube

    Luis Cluzeau Mortet(1889ー1957)の作品です。

    Luis Cluzeau Mortet, Ensueño. (1914) - Bing video 

<アルゼンチン Argentina>

   「南米の他の国のように、多人種的混合による音楽と異なり、アルゼンチンは現地生まれのヨーロッパの『クリオーリョ』の音楽を、その民族性とした」(宮崎幸夫)。アルゼンチンの音楽の中には先住民族の音楽も、(連れて来られたかどうか知らないのですが)アフリカ系の音楽も入っていないのではないかと思います。つまりヨーロッパがそのまま移植されて成長したのがこの国であり、音楽もその結果であるということです。

 アルゼンチンの先住民族が今や絶滅寸前であることが、本多勝一著「マゼランが来た」(朝日文庫)の中に書かれていました。この国にクラシック音楽の伝統があり、アルゲリッチ、ゲルバーなど幾多の著名なピアニストを輩出していることは素晴らしいことですが、もしも先住民族の文化や音楽が葬られようとしているなら、この国のピアノ曲の今後にも関わって、たいへん残念なことです。

 宮崎幸夫さんがCD付き楽譜「ラテン・アメリカ・ピアノ曲選」②アルゼンチン編などを全音から出 版されています。こうした資料を参考に何人か紹介しましょう。

 カルロス・ロペス=ブチャルド  Carlos Lopes=Buchardo(1881ー1948)の《Bailecito》(1936)。バイレシート

とはアルゼンチン北西部(からボリビアにまたがる)音楽のようです。

        Stephen Fierros plays "Bailecito" by Carlos López Buchardo - Bing video

   グァスタビーノ Carlos Guastavino (1912ー2000)は叙情的な作風で知られています。ユーチューブに動画が多数あります。

        CARLOS GUASTAVINO - BAILECITO Luis Fernando Pérez, piano - Bing video 

  ソナチネ《ラプラタ川のロマンス 第1楽章》 ←すてきです。

        BAILE EN CUYO (C.Guastavino) dúo Marín/Constantini - Tres Romances Argentinos - YouTube  ← 推薦。

   ラサラ  Angel Eugenio Lasala(1914ー2000)の《Payada》。パジャダとはガウチョの旅楽師の歌った即興の歌です。      Piano Duo - Alberto Bohbouth & Diana Lopszyc - Payada - Angel Lasala - YouTube   

 近年、世界的に注目されるようになったヒナステラ Alberto Ginastera(1916ー1983)の作品、《アルゼンチン舞 曲》 op.2 は牛が地響きを立てて大地を走り回る光景やカウボーイの姿をダイナミックな音楽語法によって描写しています。彼の作品の特徴は硬質な抒情というところでしょう。

        Ginastera / Danzas argentinas - Kotaro Fukuma - Maison de la culture du Japon à Paris - Bing video

  【第19回定演】8.ピアノソナタ第1番 / ヒナステラ - Bing video

   アルゼンチンタンゴを代表するピアソラ Astor Piazzola(1921ー 1992)がご存じのように大ヒット中。ピアノのために書かれた作品は少ないのですが、バンドネオンのための曲などがピアノ用にアレンジされ、広く演奏されています。宮崎幸夫さんのCDつき楽譜「アストル・ピアソラ/ピアノ・コレクション」(ドレミ楽譜)など。

  Astor Piazzolla Libertango (piano) | Пьяццолла Либертанго (фортепиано) | Nikolai Kuznetsov - Bing video

  

 こちらはアルゼンチンのピアノ音楽に関する講義です(英語)。

  Clásicos Argentinos by Marcela Fiorillo - World Piano Teachers Association Conference - Serbia 2020 - Bing video

          

<チリ Chile>

 アメリカの作曲家、ジェフスキー Frederic Rzewski(1938ー2021)の作品《「不屈の民」変奏曲》は、1970年代のチリの民主化闘争の中で生まれた歌に基づいて作られているので、チリの項に入れました。ユーチューブに動画多数。楽譜は全音から。私としては、作曲の動機は素晴らしいと思うものの、前衛的な技法を駆使したこの作品は、作曲家がこの作品を一番聞かせたいと思っている人たちに届くのだろうかと懸念しています。テーマ曲は感動的で、これだけでも弾くことができれば多くの人の心に響くものと信じます。

         Igor Levit - Rzewski - The People United Will Never Be Defeated! Thema. With determination - Bing video

                                            (上)ダイジェスト版です。

   Rzewski: The People United Will Never Be Defeated! - YouTube    ← 全曲版。演奏は Yu Katahira。
 アジェンデ Humberto Allende(1885ー1959)のピアノ曲は、チリの先住民族の音楽をも素材としつつ独特の現代的な処理をしているもののようです。聴きやすいとは言えませんが、何度も聴くうちに深遠な世界に入っていくことになるのかもしれません。ここにリンクしたのは全12曲からなる《Tonadas》、Tonadaは辞書で引くと「歌詞;節, 曲」。アジェンデの作品はこの他にも
ユーチューブに多数あります。

        Tonadas - Pedro Humberto Allende - Bing video

      最近、イースター島で音楽教室を主宰していて国際的な楽壇には無縁だったマハニ・テアベ  Mahani Teabe というピアニストが「発見」されてCDが発売されました。そこにイースター島の歌が入っていますが、今後、彼女にはこの島のピアノ曲を作ってほしいものです。ユーチューブに動画多数。

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